葉枯らし天然乾燥について
更新日:2020年6月17日
葉枯らし天然乾燥とは木材の乾燥方法で「葉枯らし(葉付き乾燥)」という乾燥方法と「天然乾燥」という乾燥方法がセットになった呼び方です。
昔は機械での乾燥方法が確立されていなかった為、「葉枯らし(葉付き乾燥)」と「天然乾燥」は一緒に行わる事が多く、この様な呼び方になっています。
どちらも日本古来の乾燥方法で、先人の知恵が詰まっております。
先ず「葉枯らし」について
昔は、重機や機械類が無かった為、木材の運び出しは命がけでした。
極力、労力を減らし、死人も出したくない中で編み出された(であろう)方法が「葉枯らし」でした。
木材、特に杉は、伐採直後に自分の重量の倍以上の水分を蓄えており、そのままではかなりの重量があり、昔はそのままでは運び出せなかったハズです。その水分を蒸発させて飛ばし、軽くするためには伐採後にそのまま枝葉をつけて乾燥させる「葉枯らし」が欠かせませんでした。
葉枯らしは水分を飛ばして、軽くするだけではありません!
写真 京都大学と木暮人の実験の写真
上写真には伐採直後の杉(左)と後日、その杉を葉枯らしをかけた材(右)を、薄くスライスして、デンプンの量を調べてみました。黒い色がデンプンです。左側の伐採直後にはデンプンがたくさん残っていますが、右側の葉枯らし後にはなくなっている事がわかります。
葉枯らしを行う事により、木が生き延びようとして蓄えている養分(でんぷん質)を使って、虫や腐朽菌に対抗する成分(疑似的なフェノール成分)を作り出すこともわかっています。
疑似的なフェノール成分は木の色艶や香りにも繋がる成分で、この香りにはリラックス効果があることも証明されています。(杉の場合)
葉枯らしのメリット
・デンプン質が消費され、それらが原因で発生する虫食いや腐り、カビなどが少なくなる
・疑似的なフェノール成分が作られ、色艶、香り、虫やカビに対する抵抗力が向上する。
・製材後の反りや狂いが少なくなる
次に「天然乾燥」について
天然乾燥とは丸太を製材した後に、乾燥機を使わずに自然の力で乾燥させる乾燥方法です。
対照的に、機械を使い、熱を加え短期間に乾燥させる木材乾燥を人工乾燥と言います。
高温による人工乾燥の場合、下写真のようになってしまうこともあります。
人工乾燥は熱を加え、急激に乾燥させていくので木材の外側から乾燥していきます。ですが、内部はまだ乾燥していない状態です。
ドライフルーツを思い出してもらうとわかるかと思いますが、乾燥させると物体は縮みます。
外側が乾燥しており、内部はまだ乾燥していない状態になると外側だけが縮み、内側が縮まないという状態になると、外側が内側を引っ張り、内部が割れてしまう「内部割れ」(上写真参照)という現象が起こります。
このような割れが発生すると、強度的に問題になります。
実際に天然乾燥と人工乾燥の杉の強度実験を行いました。
上写真の棒グラフ見て頂くと、人工乾燥の杉は一定の力が加わると、破断してしまいますが、天然乾燥の杉は破断する力が加わっても、一定時間、しなって持ちこたえている様子が見て取れるかと思います。
例えば地震が起きた時に、天然乾燥木材で作った木の家でしたら、しなって持ちこたえている間に屋外に逃げたりとか、地震が納まるといったことも考えられるのではないでしょうか。
他には
以前のブログでも紹介しましたが、高温による人工乾燥処理を行うとシロアリやカビなどに対する抵抗力を持つ成分が揮発してしまい、木の本来の良さが損なわれてしまうこともわかっております。
更にこの成分には香りによる効果も関係しており、
林野庁の資料「科学的データによる木材・木造建築物のQ&A」には杉の香りには血圧を下げたり、ストレスを抑制したりする効果があると記載されていますが、この香り成分は高温乾燥を行うと最悪、無くなってしまうことがかかれております。
更に人間工学及び木材工学者として、著名な小原二郎氏の著書「木の文化」では木材の老化について書かれており「常温で1000年間かかった老化は、70度の熱を加えると200日間、100度なら10日間でその変化に相当する」と書かれています。
つまり、高温乾燥を行うと木材は早く劣化してしまうことです。
最後にお伝えしたいことは、このような写真や説明文をただ鵜呑みにするだけではなく、木材の産地(山や製材)に足を延ばし、木材に直接触れ、匂いを嗅ぎ、現地の人の話を聞いてみる事が大事だと考えております。
家を建てたい、リフォームしたい一般の方でも一生に何度もない家づくりですので、是非工務店や設計士さんに相談して産地にきて頂きたいと思います。
施工後のお客様よりペットも喜んでいると何回かお話を頂けました。
・補足1
柱やフローリングとして使う木には、適切な伐採時期があります。
それは水分や養分の吸い上げが少ない秋・冬です。
水分が少なければ乾燥期間が早くなり、
養分が少なければ、その養分を原因として発生するカビや腐り、そして虫食いなどを少なくすることができます。
・補足2
桧は含水率がもともと少ないのでTSドライでは葉枯らしを行っていません。
山に長く置いておくと変色が始まり、木材の質が低下してしまうためで
Comments